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執筆者の写真水越朋/Tomo Mizukoshi

境界を柔らかく無くす

ここのところ調子がいい。

調子がいいというのは、色んなことを感じられる状態の時にそう言いたくなる。

私は調子がいい時とそうではない時があって、調子が良くないと何もできなくなってしまうのだが最近はなんだかとても調子がよくて、そういう時は感覚が鋭く踊りも面白くなる。



スペインをふらふらと旅していた時に、終盤のころに滞在したコルドバにて。

その日は天気も良くて川沿いを散歩していた。気持ちのいい昼下がりで、少し歩き疲れたので川沿いで見つけたベンチに座った。

行きたいところにも行ったし慌てることもなく、ただボーとしていたら、お腹が空いて風が気持ちよかった。

そのお腹が空いたという内的感覚と風が気持ち良いという外的感覚がボーダレスにあって、身体の内と外はその瞬間無かった。

そのことにとても感動した、旅で得た一番の収穫だったかもしれない。

この感覚を日本に帰っても忘れないようにしようと、あの時強く思ったのだが、なかなかそれは難しくて、日々に追われるとその感覚が濁ってくる。

その内側と外側が繋がるような感覚を、私はもっともっていたんじゃ無かったかなと思う。

自分が無くなるような、全てが自分になるような。


最近ケルト文化の本を読んでいるのだが、ケルトの自然信仰や非具象美術を好んだ感覚は、そのコルドバで感じたことと近い気がしている。


肉体や情念を独占する「人間」(人像)の表現をケルト美術は拒んだ。


非具象美術人間の姿をした神や特定の場面を具象的に表現するのが第一なのではなく、より純粋に色やかたちを体感できるような美を表現することが彼らの伝統にかなっていた。



やらなくてはいけないことがあっても、あえて出かける、出かけてから作業する。

出かけることが私にとっては結構大事なのかもしれない。

一人で出かける、街に、作品に、空間に、何かに出会う。

そうやって内と外のボーダーを柔らかくしていく。

風通しをよくしていく。

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