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執筆者の写真水越朋/Tomo Mizukoshi

なにもない感覚の記憶

日常のふとした瞬間にスペインで過ごしていた時のことをよく思い出す。ふとした瞬間に感覚があの頃とリンクして、記憶がよみがえってくる。

仕事で来ていた相模原駅から次の仕事先へ行くため、ホームへ降りる下りのエスカレーターに乗り運ばれていると、ホームのフェンス向こうから何もない青々とした景色が見えてきた。


バルセロナからガウディの建築を見るために電車に乗り移動した。目的の駅で下車すると、本当にここか?と心配になるほど駅から見える景色は何もなくて、遠くまでよく見渡せる。電車を降りてすぐに一歩が出せなかった。

その時の「なにもない」感覚と相模原駅のエスカレーターに立つ自分が繋がった。

なんにもないなぁとエスカレーターを降りてホームを歩き出す。

感覚の記憶。体験した記憶は鮮やかだ。

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